音味

音響や配信に関するメモ書

ポッドキャストを聞きやすい良い音で録音するためにやっていること

https://pbs.twimg.com/media/DunLHCBUwAYd-w5.jpg:small

ポッドキャストを良い音で録音して聞きやすくするためにajitofm でやっている工夫やマイクのセッティング、レコーダーなど機材について2018年12月時点でまとめてみます。

3行でまとめると

  • マイキング(マイクの設置場所や調整)が一番大事
  • 聞きやすい綺麗な音はできるだけ部屋の反響音を入れないこと
  • 長くポッドキャストを続けるためには頑張りすぎないこと

目次

ポッドキャストは良い音で録音しリスナーの疲労軽減

 最近技術系ポッドキャストの数が増えてきましたね。スマホだけでポッドキャストを一通りできるAnchorなど手軽さがました結果もあると思います。 jp.techcrunch.com  ただ、それだけ番組が増えるということはリスナーを獲得するのも大変だったり、あのポッドキャストに比べて自分のポッドキャストの音が悪くて聞きづらいなどで悩んだりすることに。1時間ぐらいの長さになってくると綺麗に録音された良い音の番組はリスナーの疲労軽減にもつながるのである程度意識したいところです。

 自分は suzuken (@suzu_v) | Twitter がメインパーソナリティをしているajitofmの録音のヘルプをしています。 ajito.fm

 いろんなパターンを試してきたりしたのですが、複数人で収録するならこれでいいかなーという感じになったきてのたでこの記事でまとめてみようかと思います。

マイクの設置場所や調整 (マイキング )を一番意識

 録音した音はあとからソフトウェアでいじることで、ノイズを減らしたり(ノイズリダクション)、音量レベルをあげたり(ノーマライズ)、音の大きさを揃えたり(コンプレッサー)できますが、一番理想なのは何もしなくてもノイズが少なく聞きやすい良い音で録音することです。編集にも限界ありますし編集しすぎると不自然になったり、編集時間もかかってしまいます。

 何もしなくても良い音になるようにするために一番大事なのはマイクをきちんと正しい場所に設置し録音することです。当たり前のことですが意外と忘れられがちなことです。

反響、空調音の少ない環境で収録

 録音する環境も大事です。余計な音が鳴らない部屋で収録するだけでマイキングも楽になります。

 一番気になるノイズは部屋の反響音をマイクが拾ってしまっている音です。反響音をわかりやすく説明するとお風呂で歌うとエコーのように声が響きますよね。普段は気にならない部屋での会話でも実はそれなりに部屋の壁や天井などからの反響音が存在しています。本当は壁や部屋のコーナーに吸音材などを用意したいところですがなかなかそれは難しいですよね。

www.youtube.com

 なので録音する場所を何箇所か試してみて反響音が少なくて済みそうな場所を探すというのをオススメします。ゼロにはならないけど少しでもマシな場所で収録する。ということですね。

 また、オフィスなどのビルだと空調の音は結構大きくマイクが拾ってしまいます。理想でいうと収録中は空調を切ると良いのですが夏場など厳しい場合も多いと思います。空調以外にも蛍光灯などのホワイトノイズなどもあります。これらのの音は常に一定音が発生しているので、誰も会話していない無音(外部のノイズのみの音)部分を使ってAudacityのノイズ除去を使えばそれなりに綺麗に除去できるので何も考えずにノイズ除去することをオススメします。

マイクと口元の距離はできるだけ近く一定に保つ

 理想はマイクとしゃべる口元の距離をある程度近くし、できるだけ一定の距離にし常にマイクに向かって話すように意識するようにするだけで全体を通して良い音で録音ができるはずです。

 マイクの種類(ダイナミック、コンデンサー)によって癖があるので、そこは何度か試し撮りをして自分の声量にあったいいかんじに聞こえる距離を探しましょう。たとえば近接効果が出やすいため近すぎると籠もった感じの音になったりします。しかしある程度低音成分が多いとそれがラジオっぽく聞こえる音質になるかもしれません。

 また、笑い声が一番声量が出るので、笑った場合に音が歪まないかどうかは確認しておくと良いです。

 どうしても声の大きさの変化が激しい場合は、最終手段としてコンプレッサーを使うことで音のおおきさの粒を揃えることができます。(が頼らないほうがいいです

失敗をへらすコツは本番録音の前に試し録音をして確認すること

 一度仮録音してみて、どういうふうに聞こえるか確認するだけで失敗はぐんと減ります。またこのときには一番使い慣れているイヤホンやヘッドホンで聞いてみましょう。普段聞いているのと異なる環境で聞くと違いが分かりづらかったりします。また、あえて安いイヤホンで聞いてその環境でもいい感じに聞こえるかどうかを確認することでより失敗が減らせます。

 ポッドキャストはスピーカーで聞く人よりは、イヤホン、ヘッドホンで聞く人の割合のほうが高いと思います。なので、とりあえずイヤホン、ヘッドホンで自分にとっていい感じに聞こえるように意識すれば大丈夫です。

 また、仮録音で音が小さすぎる場合はできるだけレコーダーのゲイン(録音ボリュームみたいなもの)をあげるようにしましょう。そもそもの音が小さいときはあとからどう頑張っても大体失敗するパターンです。

マイクの吹かれ対策

 マイクに口を近づけると吹かれ(音ではなく息遣いなど)が入ってしまうことがあります。ポップガードを使うことである程度防ぐことはできますが、ポップガードがない場合はどうすればいいでしょうか?

www.soundhouse.co.jp

 通常ダイナミックマイクをスタンドにマイクを立てて録音すると口元の下方から狙うことになります。

f:id:brtRiver:20181224094246p:plain

 口から出る息の方向にマイクがあるのを避ければ軽減できるので、たとえば鼻先を上方から狙うようにすると吹かれはかなりなくなります。

f:id:brtRiver:20181224094355p:plain

 ただし、低音成分が少なくなってしまうのでローカット(ハイパス)の設定はOFFにするといい感じの音になることが多いです。  ajitofmでもこのセッティングで録ったことあったのですが、人数が多いとマイクがスピーカーの顔をみるのに邪魔だなぁという問題があったのでやらなくなりました。数人の録音であれば上方から狙うのは自然な録音ができることも多いと思います。

ポッドキャストの録音に最適なマイクは?

ポッドキャストの録音に適したマイクの選択は大きく分けて1人の会話を録音する場合か、複数人の会話を録音する場合で変わってきます。それぞれの場合についてどういったマイクが最適か考えてみます。

1人ポッドキャストはUSBマイクが最適

www.shure.co.jp

 1人で話すポッドキャストならミキサーも何も用意せずUSBマイクを利用すると良いです。アナログマイク + ミキサーだと起こりがちなホワイトノイズも乗りづらいです。いろんなマイクがありますが Shure が最近力を入れている感じがあり、個人的にはShure MOTIV MV5がオススメです。 www.shure.co.jp

otoaji.hatenablog.jp

 他のメーカーからも有名なコンデンサーUSBマイクはいろいろ出ています。高いほど大体クリアないい音で取れますが、言い方を変えると環境音(空調)などのノイズもクリアに拾ってしまうのでマイキングをがんばることを忘れないようにしましょう。

 自分ひとりが話すのですから、きちんと口元に近づけるようにセッティングし収録するだけでかなりいい感じになると思います。

多人数での録音にはZOOM H6などのレコーダー

 大変なのはゲストを迎えて話を収録する場合です。理想でいうと話す人全員分にマイクを用意したいところですが、なかなかそれも難しい場合もあると思います。    オススメするお手軽な方法はレコーダーを買うことですが各社からいろんな商品が出ています。ajitofmで最近良く使っているのが ZOOM H6 です。簡単に説明すると、マイクがついていて、そのマイクとは別に4つのマイクも同時に録音できる。そんなレコーダーです。

f:id:brtRiver:20190102001611p:plain
専用のマイクとそれ以外にもinput端子を持つレコーダー

XYマイク、MSマイクが付属し、その他に4本のマイクを入力できる6chレコーダー

www.zoom.co.jp

 このレコーダー単体でとるなら 付属のMSマイクをつけてサイドを切ればモノラルマイクとしていい感じに録音できます。また録音のモードに、過大入力があって音が割れてしまった場合のために、同じマイクの音を-12dBで録音させることができます。これは再録音できないポッドキャストではとても嬉しい機能ですね。

 また、ステレオではなくモノラルでとってしまったほうが音像がはっきりします。ポッドキャストのような音にはモノラルのほうが聞きやすいことが多いと思います。

 実際に5人で話した回をZOOM H6一本で録った回がこちら。

ajito.fm

 ただ、このレコーダーでも3,4人になってくると全員からいい感じの距離にマイキングすることが難しくなってきます。なので、2人であってもマイク立てて録音するとより自然な収録ができます。

ダイナミックマイクSM58かBETA57Aが無難

 さきほど紹介したとおりH6には4本マイクをつなげて個別に録音することができます。これはとても重要で、あとで話し手による声量の違いなどを収録したマイクのチャンネルごとに調整ができるということです。マイクが1本しか使っていない場合はどうやっても調整には限界があります。

 そうなるとマイクを用意しなくてはなりませんが、どのマイクを用意したらよいのか迷うと思います。私の結論としてはオススメはSHURE SM58です。

超定番ダイナミックマイク SHURE SM58

 いわゆる定番マイクなのでむちゃくちゃキレイに音がとれるというわけではないし、声の抜けもそこまでいいとは言えないですが、とにかく無難な音です。  また、コンデンサーマイクは湿度など管理をしっかりしないと故障の原因になったりしますが、ダイナミックマイクコンデンサマイクより丈夫ですし、SM58は過酷な環境で使われても安定している実績もあります。

 もし、予算に余裕があるなら 同じSHUREの BETA57A はSM58より少し高音域が抜けてとれるのでマイキングが楽になると思います。

SM58と同じく扱いやすく高音の抜けが良い BETA57A

 また、複数人で1つの机を囲むのであればバウンダリーマイク(よくニュース番組とかで机の上に置かれている平べったいマイク) を使うという選択肢もありますが、1本のマイクだと無指向性のタイプを使うことになるため空調などの環境音や、机の上でPCをタイピングしたり飲み物を置く音など入ってほしくない音もそれなりに入ってしまいます。そのためポッドキャストではバウンダリーマイクはあまり適していないと思います。

https://www.soundhouse.co.jp/images/shop/prod_img/a/at_at9921a.jpg

アームスタンドを使って設置作業を簡単に

 また、人数分スタンドを立てるとなると机の上にショートブームのスタンドを立てるか、アームスタンドを用意するパターンが考えられます。

サウンドハウスの格安アームスタンド

 ただし、スタンドが邪魔になって話し相手の顔が見えづらくなることがあります。そこで ajitofm では最近は1つのスタンドに複数マイクをつけることができるアームを買ってみたところ話す人からは少しマイクが離れてしまいますがお互いの顔も見えつつ設営も楽になりいい感じになりました。

1本のマイクスタンドにマイクを6本取り付け可能なアクセサリ

f:id:brtRiver:20181223233040p:plain

できるだけマイクを安く買うならサウンドハウスSM58は偽物に注意

 Amazonでも販売されていますが、同価格かそれ以下でサウンドハウスで購入できるので、ケーブルスタンドも一緒に買うとかなり安く揃えることができます。  たとえばケーブル(XLR-XLR)は 1,000円以下で買えます。近くの家電、楽器屋さんにいってもこの値段ではなかなか売ってないです。

クラシックプロ(CP)はとにかく安い

 また、ケーブルなどをしまうのにはドラムのタム用のソフトケースが便利です。

ドラムのタムケースはケーブルの収納に便利

 あと、注意はSM58はとても有名なマイクなので偽物がよく出回っています。有名店以外のオークションやネットショップで購入するのはできるだけ避けてサウンドハウスイシバシ楽器など有名店で購入することをおすすめします。

  togetter.com

ゲストを招くときは最初に軽くマイクとの距離などを伝えておくのが吉

 ポッドキャストにゲストを招くときにゲストが収録環境に慣れていない場合が多いです。そのため、収録前に、

  • マイクには近づいて話をしてください (具体的に距離感を伝えるとGood
  • マイクとの距離はできるだけ一定に保つようにしてください
  • くしゃみ、咳をするときは、下をむいてやってください (マイクに向かってやらない

を伝えておくと失敗するリスクが減ります。

録音の加工はAudacityが簡単

 あとは収録した音源を加工してアップロードするだけですが、どういった処理を行うと良いかまとめます。高価なDTMソフトを使わなくても Audacity で大体できてしまいます。  ノイズ除去とノーマライズは何も考えずにやると良いと思います。

https://www.audacityteam.org/download/mac/

ノイズ除去

 録音した音源で何も話していない本来無音のはずの領域を選択し、その音を音源から引き算してくれます。つまり空調のような一定のノイズ音成分を消してくれます。これをやるだけでかなり聞きやすいポッドキャストになります。ただし、部屋の反響音のような残響音は消せません。

f:id:brtRiver:20181224095938p:plain

ノーマライズ(正規化)

 音源の一番音が大きいところにあわせて全体の音量レベルをあげてくれる機能です。調整することで全体的に小さい音になってしまった音源もある程度大きくできます。  ただし、小さい音が大きくなるということはノイズも一緒に大きくなってしまうということです。その点は注意。

f:id:brtRiver:20181224100253p:plain

コンプレッサー、リミッター

 簡単にいうと特定より大きな音を潰すことで音の大きさを揃え、全体的に同じ大きさの音にする。というエフェクタです。  お笑い芸人のようなめっちゃ声でかいとか声量変化激しい人がゲストだったら欲しくなるのがコンプレッサーです。  笑い声でクリップしてしまうような場合はリミッターが有効です。  zoom H6には内蔵されているので設定しておくことが多いです

f:id:brtRiver:20181224101558p:plain

ローカット(ハイパス)

 もこっとした低音域をカットする機能です。聴き比べてどっちが自然かで決めると良いです。  実際は声質にもよりますが基本ローカット設定をONで録音すると良い感じになることが多いと思います。

予算に余裕があるならミキサー卓の利用をおすすめ

 ajitofm では zoom H6以外に 同じくzoomのLiveTrak L-12というデジタルミキサーで録音することもあります。お値段は高くなりますが、個別にEQも掛けられるのはもちろん各チャンネルを独立して録音することも簡単にできます。特にミキサー操作になれている人は断然 LiveTrakのほうが操作しやすいです。

 各chを個別に録音できる12ch デジタル・ミキサー

 「もっと安いミキサーでUSBでPCにつなげるのあるし(オーディオインターフェース)!」という意見もあるのはわかりますが、安心安定して録音するためにはPCのソフトは使わずハードウェアだけで録音できる環境にするのをおすすめします。

まとめ

今までの経験を踏まえて自分が考えるポッドキャストを聞きやすい良い音で録音するためにやっている工夫やマイクのセッティング、機材についてまとめてみました。 マイキングに始まりマイキングに終わる。そして無理のない収録環境を用意し継続して配信できるようにすること。ですね。